今の季節は、ここいらでは一番子馬の産まれる時期で、山へ行けばどこの牧場でも数頭のとねっこ(当年仔)がいる。三ヶ月も経てば体は四、五倍にもなって、若馬が緑の草地を華麗に駆けまわる姿を眼にする。春の美しい情景だ。
母馬は子を産んだ直後すぐに受胎して、十一ヶ月後のこの時期に再び子を為す。そういう境涯を十数年も続けるのだという。母馬も父馬もそれなりの良馬なので、この境遇は生涯変わらない。いかにも良血を重んじる競走馬の世界のこと、その経済性をとことん突詰めたら、こういう形態になるのだろうな。
日高地方は日本の競走馬の八十%を生産するサラブレットの王国で、水田を牧場に商売替した地域でもある。それを思えば、冒頭の若馬の情景はなんとも愛おしい。
高田則雄
