セリ前の市場でのこと、集った仲買人たちが雑談をしている。出漁船、狙いの魚種、漁獲の見込等々。その中に見馴れない話題がふと入った。
”寒に降る雨はな、イカになるんだ。 今年はイカが来るぞ” ”ホントかよ。それならいいなあ” 外は冷い雨。
浜にはこうした俚諺がゴマンとある。おそらく、浜に上がるすべての魚にこうした言い伝えが貼りついている。
東京から家に戻った頃、セリ場に並んだ魚を見ても殆ど名前が判らなかった。カレイなど十種類もいるのに、名が判るのは三種ほど。
こうして時間の中で魚の名も用途も漁獲法も知り、商売に繋げてきたのだった。そう思うと、自分もまた 浜の伝承の一部なりともを担う身になったのかなと、少しばかり感動する。

高田則雄