大昔の話である。
中学生時分、野鳥を獲る風が普通にあった。晩秋の頃、森の奥にいる小鳥たちが里へ下りて来る。これを狙うのだ。市街に近い里山の斜面にカスミ網を張る。呼鳥(ヨビトリ)の籠をその後方に据えて仕掛は完了だ。
空が白み始めると、遠くから野鳥の声が聞こえてくる。呼鳥がせわしく動き出す。と、呼び込むように激しく鳴き出す。彼の仲間の小さな群がそちこちの木の枝に集ってくる。籠の仲間を認めると、一羽、二羽とそれをめがけて降下してくる。網の餌食だ。枝の仲間は不思議そうに見ているばかりだ。
こうして、ヤマガラ、ウソ、マヒワの声と姿のいい雄鳥が、町中の愛鳥家の軒先を飾ることになる。さてこの一羽が、アンパン代1箇にでもなっていただろうか……。
高田則雄