伊坂幸太郎 著
KADOKAWA 2023
天道虫と呼ばれる伝説の殺し屋、七尾はプレゼントを届けるだけの「簡単な仕事」を依頼されたはずなのに、嫌な予感に反さず次々と目の前に困ったことが現れる。
舞台は高級ホテル。宛先の部屋番号を読み違えて届けたら、殺されそうになったから戦った。そこから不運を呼び込むが、戦いには強い七尾の逃走・闘争が始まる。そしてあちこちに登場する謎の人物だらけの中、本作のヒロインである紙野結花とエレベーターで出会ってしまい助けを求められる。紙野は、圧倒的な記憶力を持ち忘れられない頭脳のせいと、幼少期から複雑な境遇で苦労が多かった。大人になってからは犯罪に近いところで、パスワードなど重要な情報を記憶する役割を担っていた。その紙野の頭にしかない情報を欲しがる誰か。その情報を消したい誰か。紙野と逃げることになる七尾。
前作『マリアビートル』では、東北新幹線に天道虫が乗ってまもなく、どんどんと人が消えていった。そして新幹線内で次々に起こっていく理不尽な殺人を「うひゃ〜」という気持ちで読みながら天道虫の行く末を心配したのだった。こんなに人が初っ端から殺されていく作品って何なんだと思いつつも、作家の伊坂マジックに嵌められていった。『マリアビートル』は、ブラッド・ピット主演の『ブレッド・トレイン』(2022)として映画化された。舞台は京都行きの東海道新幹線ということに変わっていたが、ブラピが酷い目に遭いながらも、なんとか切り抜けていく様は、原作とはまた違う映像ならではの面白さがある。こちらも伊坂さんのファンなら観るのをお勧めしたい。
天道虫は、いつもぐずぐず思っているのに結局は、格好いいんだよね。
『777』というタイトルの訳は、まさかの展開と共に腑に落ちるのでお楽しみに。
2024.4.5(M)