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2024.03.01 更新

木曜殺人クラブ 逸れた銃弾

リチャード・オスマン 著、羽田詩津子 訳
早川書房 2023

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翻訳では2021年に刊行した『木曜殺人クラブ』の3冊目が本作である。1作目を書店で見たときに物騒なタイトルだなあと思いながらも手にした。読み始めるとリタイアして時間がたっぷりある引退者用の施設に住む老人たちが未解決の事件に挑む、その名を「木曜殺人クラブ」というのだ。
1作目では、過去にいわくありげな仕事をしていたのだろうとわかるエリザベスが中心人物として描かれていたが、2作3作目と進むに従いエリザベスを含むクラブの4名、そして関わる周囲の人々の人物像がはっきりとしてきて、主役がエリザベスだけではなく、クラブのそれぞれのメンバーが個性的に生き生きとしてきた。もし、読んでみようかなと思ったら、ぜひとも1作目から手に取って読むことをお勧めしたい。

さて3作目の本作では、木曜殺人クラブが過去に埋もれてしまったテレビ局のキャスターの殺人事件を解決しようとする。実は、この著者であるリチャード・オスマンは、元々はBBCのバラエティ番組に出ているそうで、自分のいる業界を舞台に3作目を執筆したようだ。
木曜殺人クラブの捜査が進む中、エリザベスが夫と散歩中に誘拐されたり、元KGBの大佐を殺さないとメンバーで親友のジョイスを殺すと脅迫される。クラブのメンバーで未解決の殺人事件を解き明かすつもりが、それとは別の何とか阻止しなければいけない厄介な問題に巻き込まれてしまう。
そして殺人事件の真相は巧妙で大胆なものだった。殺人事件の真相に近くなりながら、登場人物たちの恋が複数進展したり、その他にも心が締め付けられることが起こったり、ぐっと厚みのある物語として作り込まれている。

1作目から登場している周りを固める警官たちや、謎の多い信頼できる男、そして本作から仲間入りした可愛いアラン(犬です)など、70代の木曜殺人クラブを支える若い面々も魅力的だ。

映画化も決定しているようで、調べてみたらなんとスティーヴン・スピルバーグが権利を獲得したらしい。どんなキャスティングにするのかを考えるだけでも今から楽しめるし、面白い映画にならないわけがない、と確信してしまう。
すっかり人気シリーズとなってしまった木曜殺人クラブ、本格的に話題になる前に読んでおくのは悪くない。

2024.2.27

星評価 4.0