2024.11.18 更新
トーン・テレヘン 著、長山さき 翻訳
新潮社 2023
登場する動物たちには、特定の名前がない。リスはリス、クジラはクジラ、ハリネズミもコガネムシも、そのまま登場する。アライグマ、イタチ、ミズスマシ、スズメ、マーモット、ムカデ、イボイノシシ、カゲロウ、、、こんな動物いたんだ?というくらいの数が登場し、それぞれが自身の「いちばんの願い」を考えている。
なぜ動物たちがそんなことを考えることになったのか。読み進めていくとそれはどうでも良いのかもしれない。
彼らは、自分の「個」をそれなりに理解しながら、妄想したり悲しがったり卑下したり喜んだりしながら、自分の願いを思う。
それぞれの想いから伝わるのは、悲しみは根源的なことが多く、妄想は馬鹿げているが楽しそうなことがたくさんある。また、悲しい時でも、自分一人ではないと気がつくとその悲しみがあっという間に違う景色に変わっていくこともある。これは人間も同じだなあ、ひとりで悶々としているよりも人と関わることで肩の荷が降りる時もあるし、誰かに相談することで解決はしなくても違う道を見つけられることもある。
オランダの作家トーン・テレヘンによるこの作品は、動物が主人公の物語として他にも『ハリネズミの願い』『きげんのいいリス』『キリギリスのしあわせ』が刊行されている。テレヘンさんの作品に登場する動物たちは、みな優しく静かで、祖敷大輔さんのイラストもこれらの本の魅力を大きく引き出している。私は『ハリネズミの願い』から読み始めたので、どうもハリネズミファンになっているようだが。
本を誰かにプレゼントしたい時に、候補にして欲しい作品だ。
2024.11.16(M)