ジュード・ロウ演じる作家がグランド・ブダペスト・ホテルで聞いた話として、奇抜な物語が繰り広げられる。
コンシェルジュのグスタヴが仕切るこのホテルは、富豪や貴族などが集まる名門ホテルだった。それもグスタヴの魅力や人柄によるものが大きい。ロビーボーイとして移民のゼロがホテルで働くようになりグスタヴに気に入られていく。
事件は常連である大富豪のマダムが亡くなったことから起こる。遺産に群がる人々、グスタヴに残された「少年とリンゴ」という絵、遺産を独り占めしようとする息子たち。策略に陥れられるグスタヴ。そして迫ってくる戦争の足音。ゼロとグスタヴの冒険のような展開で物語は進んでいく。独特の構図や色使いが美しい場面が多く、少しくらい物語を把握できなくなったとしても、スピード感にも巻き込まれながら、観る側はグスタヴやゼロと一緒に走っている。
ウェス・アンダーソン監督が繰り広げる軽妙で濃厚な世界は、この映画に限らず彼しか作れないものだ。主役のレイフ・ファインズを筆頭に豪華な俳優陣、あちこちに散りばめられたキラキラしたものが存分に味わえる。
レイフ・ファインズは、ハリーポッターシリーズで「名前を言ってはいけないあの人」である恐ろしい魔法使いのヴォルデモートも演じている役者だ。
何度も観て楽しめる良質の作品。
2024.5.10(M)