だいたい吉祥寺に住まう

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2024.11.26 更新

鍵泥棒のメソッド(2012)

オンボロアパートでの自殺に失敗した桜井(堺雅人)は、千円ちょっとの全財産と風呂のタダ券を持って銭湯に行く。桜井は全く売れない役者で生活に困窮している。偶然居合わせた銭湯の風呂場で、足を滑らせ救急搬送された殺し屋稼業のコンドウ(香川照之)のロッカーの鍵と自分の鍵を交換する。分厚い財布、仕立ての良さそうなスーツ、そして駐車場には高級車まであり、すべてを拝借する桜井。
そしてその財布から買い物をし、友人・知人への借金返済をしてから、コンドウの入院している病院に行くと、コンドウは自分の名前も忘れる記憶喪失になっており、荷物が入れ替わったせいで自分は桜井だと勘違いしている。
一方、几帳面な編集者の水嶋(広末涼子)は、相手もいないのに短期間で結婚相手を探し結婚式を挙げるスケジュールを組んでいる。どうやら病気の父親を安心させるためのようだ。
記憶喪失のまま退院した不安なコンドウと父への見舞いで病院を訪れていた水嶋が偶然に出会い、歯車が回り始めた。
そして桜井は、コンドウの自宅にある品々からどうやら彼が堅気の仕事をしている訳ではないと推察していく。
今まで失敗がなかったコンドウの仕事に桜井が首を突っ込んだせいで殺し稼業に綻びができ、コンドウに急接近した水嶋のせいで危険な要素が増えていく。
物語のテンポが良くて、堺雅人と香川照之の演技に迫力があり、観ていて飽きない。脚本の面白さに加えて絶妙なキャスティングも本作の魅力だ。  
殺しをコンドウに依頼する裏稼業の荒川良々もいい味を出していた。とっても怖そうなのに、どこか笑いたくなる怖さを持つ役柄だ。

2012年公開の本作で堺雅人と香川照之の組み合わせは、その翌年には『半沢直樹』で大ヒットしたのも記憶にしっかり残っているが、今この映画を見直すと2人とも10歳以上若いから、その若さの勢いも伝わって面白い。何度見ても楽しめる作品だ。

2024.11.23

星評価 4.0