だいたい吉祥寺に住まう

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都市住まいをする大人のために

2024.09.18 更新

無名(2024)

第二次世界大戦下の上海租界を舞台に、中国人と日本人が密談を重ねている。どうやら日本軍のスパイ活動に協力しているように見える男たち。租界にある日本を思わせる料亭でもくつろいだ雰囲気はない。誰がどんな立場で、味方なのか敵なのか、誰の言葉を信じていいのかもわからないまま物語が進んでいく。

トニー・レオンが主演なら絶対観なくてはと公開直後に映画館に足を運んだ。
予告でスパイ映画だということは知っていたが、ほとんど前情報がないままの鑑賞である。しかし時代的に考えれば日本は敗戦するわけだし、物語の始まりから、偉そうで迫力のある日本人将校・渡部(森博之)は、いずれ誰かに陥れられるんだろうなあと思いつつも、相関関係がわかるのは映画の進行と共に把握していくしかない。そして前述のように、味方と敵がどうやら入り混じっていそうな状況だ。それに加えて、かっこいいワン・イーボーの婚約者や、トニー・レオンが愛する女など、所々に美女たちが登場するので、これもどこかに罠が仕掛けられていないかと疑い深くなりながら、ごちゃごちゃになった頭のまま、物語は進んでいく。
こいつはやっぱり信用できないな、と思っていた奴は親友を裏切るし、もしや二重スパイかなと気づいた時には話の筋がずいぶん見えてきたころだった。

トニー・レオンは相変わらずカッコよかったけど、ノーマークだったワン・イーボーの美しさは、観ないと損レベルだ。そしてふたりのバトルシーンが、見どころのひとつ。撮影時には60歳だったであろうトニーと、撮影時に20代半ばでかつ身長が10センチも高いワンとのバトルは、物語上での視点としてはなく、「おい、トニーに手を挙げるなよ。でもワンくん、美しい。どっちを応援すればいいんだい。やっぱりワン、負けろ」みたいな気持ちで観ていた。この時は、もう物語なんてどうでも良いような気分になっていたのを告白する。
ワン・イーボーの他の活躍を確認していないので、映画での挙動しか知らないが、身体能力の高さと冷たさを感じる美貌は、昨今のニヤけたアイドルを見慣れた目に清涼剤だった。それから、日本人将校役の森博之が良い味を出していて、もっと見たい俳優であった。

もうすぐDVDが出るようだから、買います。

2024.9.1(M)

星評価 3.8