アイヌ民族音楽と聞いてピンと来るのは、観光地で見かける踊りや、地域のコタン行事の祈りや舞に伴う音曲くらい。かつてラジオ番組で “世界の民族音楽” というのがあって聴き入っていたことがあるけど、いつもある種のものわびしさがついて廻った。そして、それが民族音楽なのだと思っていた。
ところが、人口数千の町で行われたこの音楽祭には度肝を抜かれた。この度で三度目だというが、所作といい声調といい聴衆に正対した姿は、普段目にする音楽イヴェント以上で、出演者は皆プロ乃至セミプロなのだと聴いた。かつての “ものわびたアイヌ音楽” というわたしのイメージは、民族滅亡などという暴言に誑かされたものだったのだ。羞しいかぎりだ。
高田則雄

