だいたい吉祥寺に住まう

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2025.01.20 更新

正体(2024)

この脱獄犯、鏑木(かぶらぎ)は若くて体力もあり頭の切れそうな男だ。故意に口の中を切って血を吐き、刑務所から移送される救急車で脱走を成功させるシーンが映画の始まりである。
映画の冒頭では、この男がどれだけ凶悪なのか、それとも何かの間違いなのかは全くはっきりしない。凶悪な殺人事件を起こしたのが、本当にこの男なのか?彼を知る人々からは、いくつもの名前と彼のそれぞれの印象が語られる。それが物語の進行と共に、どうやらそれは冤罪なのではと、観る側の心が揺らいでいく。
工事現場に住み込みで働き、その中で怪我をした先輩の労災扱いのために声を上げた鏑木、なるべく目立たないように過ごしてきたのにその事で鏑木と親しくなった先輩は彼を脱走中の犯人だと気づいてしまう。そして都市部でフリーランスのライターになった鏑木。水産加工工場で働く鏑木。グループホームで介護をする仕事に携わる鏑木。その都度、変装したり顔を変えたりしながら、一見するとただ逃げているかのように見えるが、実は目的のために必死にそして周到に動いていたのだった。
周囲の人間たちは、鏑木の人柄や能力に触れると、逃亡中であるにも関わらず彼が冤罪であると信じるようになる。そして鏑木が犯人だと判決を言い渡されていた事件と同じような手口で、違う犯人の元、また陰惨な殺人事件が起きてしまうのだった。
鏑木を追っている刑事も、これは誤認逮捕ではないかと組織の中で悩みながらも真実に向き合う行動へと変わっていった。

映像のリズム感や物語性など、観る側に飽きさせることなく、あっという間の1本だった。 主演である横浜流星の演技は見事で、これを観てファンになる人だっているに違いない(私ですが)。

2025.1.16(M)

星評価 4.0
地中海世界の歴史5